Ars cum natura ad salutem conspirat

素顔の美術館


皆さんは美術館の展示室が、普段はたっぷりと化粧を施した状態だということをご存知ですか?美術館と言う建物にある展示室には、構造上動かすことの出来ない元々からある壁以外に、展覧会ごとに立てられる仮設の壁があるのです。それ以外にも照明やら経師やら塗り替えられた壁やら展示台やら、もう素顔が分からなくなるくらい厚化粧を施しているのが皆さんが普段ご覧頂いている美術館の展示室なのです。それは作品保護のためでもあり、より多くの作品を展示するために壁面を増やしたいからでもあり、様々な理由からそのようなことが行なわれています。

そんな訳で展示室が素の顔を一般の皆様にさらすことはほとんどない訳ですが、石山修武展が終わりカラヴァン展の施工(会場のお化粧直しですね)が入るまでのこのほんの数日、美術館はその素顔を内部の人間にだけそっと露わにしています。こうして改めて展示室を見渡すと、その空間の豊かさ、美しさ、周りの緑を積極的に取り入れようとした作りにハッと心動かされます。特に今回のカラヴァン展はありとあらゆる外窓を塞がない方向で展示室をデザインしており、展示室は近年まれにみる明るさ。展示室冒頭の扇形の展示室の窓は本展では大きく開け放たれますので、その本来の空間を存分に活かしたカラヴァンならではの空間の構成に、是非ご期待下さい。


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