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東宝スタジオは改築ラッシュ


先日、世田谷美術館から歩いて20分くらいの東宝スタジオに行ってきました。


そこは、世田谷区が誕生した昭和7年にP・C・L(写真化学研究所)という映画関連の会社としてスタートし、昭和12年に現在の東宝となりました。黒澤明監督『七人の侍』や日本初の特撮映画『ゴジラ』をはじめ、多くの話題作を製作している撮影所です。ここ数年の間に事務棟やステージが新しくなり、今現在も最新のシステムを備えたスタジオに変貌中です。

今回東宝スタジオに向かったのは「砧同友会」に出席するためでした。東宝スタジオで働いたスタッフさんらによる2年に一度の親睦会です。映画監督をはじめ、俳優、美術、キャメラ、照明、録音、スチール、スクリプターなどなど、さまざまなパートに携わる方たち約300人が一同に介し、しばし旧交を暖めました。


会場は、昭和7年に建てられた第1ステージです。老朽化により、残念ながら6月から取り壊される事が決まり、例年、秋に開催されていましたが、急遽5月末の開催となりました。


ステージの周囲の壁には、スタッフ想い出の一枚といった写真コーナーが設けられ、会長の恩地日出夫監督の編集による、東宝の前身のP・C・Lの紹介映画の上映(13分)がありました。第1作の 『ほろよひ人生』から始まる、まさにこの会場で撮られた名作の数々が特設スクリーンに流されます。見入るスタッフたちはそれぞれがスタジオで過ごした時間を思い起こしていた様子です。


ところで、このステージの脇には、小さな神社(枚岡神社)があります。現在は工事のため、同じ敷地内に遷座していますが、制作の安全と成功を祈って、P・C・Lの開所にあたって祭られた神社です。当時、中に入れる祭神の準備が間に合わず、写真化学の先駆者・二エプスの写真を神殿の奥に鎮座させたという、P・C・Lらしいエピソードが残っています。


ニエプスの「ヘリオグラフィー」やダゲールの「ダゲレオグラフ」は写真の発明に大きく貢献しましたが、ちょうどセタビでは「フェリックス・ティオリエ写真展」(7月25日まで)を開催しています。ティオリエは、映画が発明された19世紀末に活動したピクトリアリズム(絵画的写真)の写真家です。リュミエールと交わした手紙も展示していますので、写真ファンのみならず、映画に関心のある方も、ぜひご来館ください。


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