Ars cum natura ad salutem conspirat

ヴィンタートゥールの世紀末


猛暑の中、大勢のお客様をお迎えしています。


ヴィンタートゥールという人口約10万人のスイスの小都市からやってきた作品たち。ポスターやチラシでおなじみのゴッホ、ルソーといった力強い作品のみならず、モネやゴーギャンの初期作品、ユトリロの逸品、ベックマンの静物など密かな名作ぞろいで、日本ではまったく知られていないこんな小さな町によくぞ集められたものと驚かされます。ちなみに、世田谷区は人口約80万・・・。

さてその中、密かに「ヴィンタートゥールの世紀末」と名づけたいのが、ルドンの花の静物を中心に、ロダンとロッソの人物彫刻をとりあわせて展示したコーナーです。正確にはルドン、ロダンは1900年を超えてからの作品ですが、象徴派の画家を中心にいかにも耽美的な世紀末の雰囲気を漂わせています。


特に、今年生誕150年を迎えるグスタフ・マーラーをロダンが捉えた頭像は、この異能の天才たちの出会いとして感慨深いものがあります。1909年この彫像のためにパリのロダンの前に座ったとき、マーラーはあの交響曲第9番をまさに執筆中でした。ルドンの《野の花》は、この天才たちへの献花とみることもできるでしょう。


そして、彫刻台から流れ出るようなアール・ヌーヴォー彫刻といってよい、ロッソの人物像。昨年は、オルセー美術館からアール・ヌーヴォーの工芸品を展示した世田谷に、ふたたび小さな世紀末が訪れています。


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