Ars cum natura ad salutem conspirat

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美術館の空調のなぞ


世田谷美術館は、2012年の3月30日までお休みをいただいて改修工事を行っています。

我々職員は、館内の工事をしないエリアに仮事務室を構え、館外で行うワークショップの準備や来年度の展覧会準備をしています。毎日、「ギー、ギー」「ガァー、ガァー」「ドタバタ」など不思議な音が鳴り響いています。


主な工事は、25年間休まず働いた空調機の交換と配管の整備です。老朽化した空調機は、温湿度を一定に保ちにくく、そのために作品はダメージを受け易くなってしまいます。また、来館してくださるみなさまにも、快適に過ごしていただけなくなります。


特に作品を展示している展示室や作品を保管する収蔵庫は、作品保護のために24時間空調をかけ続けて温湿度を保っています。25年間休まず使用すると、216000時間も働いたことになります。時間で換算すると凄い桁です!

みなさんは、「空調機」というとエアコンを連想されるかもしれませんが、美術館のような大型の建物の空調機はちょっと違います。加熱・冷却のできる熱交換器という大きな機械を使っております。機械が大きければ、電気もたくさん消費すると思いますが、世田谷美術館は、「空に雲が浮かんだ模様の煙突」のある世田谷清掃工場がお隣にあるので、大丈夫です。ゴミが焼却される際に出される蒸気をいただいて動力としています。


実は、美術館と清掃工場は、蒸気を通す管で繋がれています。美術館の地下にある機械室へ160度の蒸気が供給され、それを熱交換器という機械で温水と冷水に分けています。温水で空気を温め、冷水で空気を冷やして室温を調節します。暑い夏は、冷水を多く生産して、寒い冬は、温水を多く生産しています。気温だけでなく、湿度管理も美術品にとって重要。程よい湿度(55~60パーセント)を維持するために日々微妙な調節が必要です。


25年間同じ機械を使っていたり、蒸気を清掃工場からいただいたりと、意外と世田谷美術館がエコであるとお分かりになっていただけたでしょうか。また、空調が、美術館の根幹部であることもご理解いただけたでしょうか。


サン・テグジュペリの『星の王子さま』で「大切なものは、目には見えない」と王子さまが言いますが、目に見えない不調が美術館にもあり、それが一番危険なものだったりするのです。だからこそ、目に見えないところの工事は怠りなく、じっくりさせていただいております。

2012年3月31日からは、よりキレイな空気の中でみなさんをお迎えいたします。作品にも人にも環境にもやさしい美術館であるためにもうしばらくお待ちください。


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