Ars cum natura ad salutem conspirat

宮本三郎とジョルジョ・モランディ


イタリアの画家、ジョルジョ・モランディ(1890-1964)をご存知でしょうか?

20世紀イタリア美術において最も重要な画家の一人とされ、壜や壺をモチーフにしながら、静寂を感じさせる独特の静物画によって広く知られる作家です。日本の美術館における大規模な展覧会は、1989年から90年にかけて神奈川県立近代美術館など全国の5館で初めて開催されたのち、1998年に東京都庭園美術館と光と緑の美術館の2館で開催されてからは行われておらず、今年度久しぶりの展覧会が全国的に開催される予定でしたが、東日本大震災の影響で海外から作品を借りることが困難となり、残念ながら中止となりました。

開催予定館だった神奈川県立近代美術館学芸員、籾山昌夫さんが分館の宮本三郎記念美術館へモランディ展の調査にいらしたのは、去年の10月のことです。なぜモランディ展の調査で宮本三郎なのか? 不思議に思われる方がほとんどではないかと思います。私も話を聞くまで知らなかったのですが、籾山さんがおっしゃるには、宮本三郎は日本できわめて早い段階でモランディの紹介・言及をしており、日本におけるモランディ受容調査のため、蔵書を調査させていただきたいということでした。宮本三郎記念美術館では、宮本三郎の生前の蔵書-和書・洋書含めて1万数千冊の保存・整理を進めており、その中にモランディに関するものがないだろうか? ということです。

その詳細や結果については、開催は中止となったものの、「幻の展覧会」としてカタログのみ刊行となった『ジョルジョ・モランディ』(フォイル、2011年)に収録されている籾山昌夫さんの論考をぜひご一読いただきたいと思いますが、このような形で宮本三郎にスポットが当たるのもとても嬉しいことです。画家として精力的に制作・発表を行いながら、作画技法の解説を雑誌等で監修するだけではなく、数々の美術論も寄稿し、美術評論家に負けず劣らずの論客としても名を馳せていた宮本三郎。その一端を、こういったところからも知ることができます。


Copyright Setagaya Art Museum. All Rights Reserved.