Ars cum natura ad salutem conspirat

食べる絵 素朴派ランチinかすがい


世田谷美術館の休館中の活動として、昨年の春から小樽、市川、笠岡を巡回した「アンリ・ルソーと素朴な画家たち いきること えがくこと」展。素朴をテーマに52点の収蔵品で構成した企画展ですが、最終会場となる愛知県春日井市の文化フォーラムかすがいで1月21日オープンしました。各会場では展示のみならず、世田谷のボランティアさんたちがギャラリー・トークや100円ワークショップを行うなど活発な交流も行われています。

各会場担当者の力の入ったオリジナル活動も魅力的ですが、春日井では近隣のホテルとのコラボレーション、素朴派ランチが実現。オープンを前にこのランチをスタッフのみなさんと、ホテルプラザ勝川(かちがわ)のカフェレストラン・ソレイユにて試食してきました。前菜・スープ・メイン・デザートというコースですが、これがセラフィーヌの《枝》、ルソーの《フリュマンス・ビッシュの肖像》、ボーシャン《花》より生み出された創作ランチなのです。

まず出されるオードブル、セラフィーヌの《枝》は、アスパラの枝に、可憐なスタッフド・プチトマト、ミニ・シュー(グジェールというブルターニュ地方の郷土料理なんだそうです)、マイクロトマト、枝つき干しぶどう、エディブル・フラワーで果実と葉を表した華やかなもの。中でも手前に添えられたかわいい果実がオレンジ色のほおずきであることに驚き、またこれが甘酸っぱいさわやかな果実であることに二度びっくりです。ほおずきが食べられるとは知りませんでした。

野菜のスープのあと、メインの《フリュマンス》が登場。彼の軍服はドライトマトをサンドした白身魚。彼が立っている手前の道はクスクス。クリームソースの中に描き出されたフリュマンスの口髭は、美容効果ありという「竹墨」なのです。頭にあたる小なすは、原画にはないけれども鉄兜かも。ルソーが亡きフリュマンスへのオマージュとして手製の額に描きこんだ緑の一枝、エストラゴンが実に薫り高く、満足の一皿でした。

最後のデザートは、ボーシャンの花瓶に活けたたくさんの花ですが、この盛り込まれた花は金糸のような飴細工に色とりどりの花びらを散らして表現されています。花瓶はビターなチョコレート製ですが、飴細工の下にはフランボワーズのムースが隠されています。もったいないながら、金糸とチョコレートを壊しながらいただくと、思わず「あう!」という声があがりました。

というわけで、展示の合間に駆け付けたランチでしたが、その工夫と充実ぶりに脱帽。聞けば、ホテルのシェフ、パティシエともに通勤電車の中でもお風呂でも考えに考えぬいたたとか。試行錯誤もあったことと思われます。それにしてもここまで力の入ったランチに、所蔵館としてしみじみ幸せを感じました。この「美×食」スペシャルランチは、1日10食限定、おひとり2,800円です。


「アンリ・ルソーと素朴な画家たち いきること えがくこと」

2012年1月21日(土)~3月18日(日)


文化フォーラム春日井(問0568-85-6868)


Copyright Setagaya Art Museum. All Rights Reserved.