Ars cum natura ad salutem conspirat

セラフィーヌ・ルイ《枝》1930年 世田谷美術館蔵

開館30周年記念 コレクションの5つの物語

2016年11月19日~2017年1月29日 1階展示室


開催概要

世田谷美術館は1986年3月30日、23区内でも有数の緑地である都立砧公園の一角に開館しました。建築家・内井昭蔵による木と大理石とコンクリートを組み合わせた装飾性豊かな建築空間は、当時の公立美術館のなかでもとりわけ優雅なもので、そのコンセプトは「生活空間としての美術館」です。
開館記念の「芸術と素朴」展以降、同時代の最先端の美術や古代の発掘品など幅広いテーマのもとに展覧会活動を行い、今年開館30周年を迎えました。
また、素朴派、現代美術、世田谷ゆかりの作家の3 つを柱に収集活動を続け、所蔵作品は現在1万6千点を数えるほどになります。
開館30周年を記念する本展では、フランスの素朴派を起点として、時代やジャンルを超えて作品を組み合わせ、美術と生活をめぐる5 つの物語に見立てて、コレクションをご紹介します。美術館で展示されている作品は普段の生活と切り離された特別なものと思いがちですが、その作品たちも、普段私たちが生活し時にはつつましやかな創造を楽しむことと、ひとつながりであることに気づくことになるでしょう。



基本情報

会期:2016年11月19日(土)~ 2017年1月29日(日)
開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日:毎週月曜日 
※ただし、2017年1月9日(月・祝)は開館、翌10日(火)は休館。
会場:世田谷美術館 1階展示室
観覧料:一般1000(800)円、65歳以上800(600)円、大高生800(600)円、中小生500(300)円 
※障害者の方は500(300)円。ただし小・中・高・大学生の障害者は無料、介助者(当該障害者1名につき1名)は無料。
※( )内は20名以上の団体料金。
●リピーター割引 会期中、本展有料チケットの半券をご提示いただくと、2回目以降は団体料金にてご覧いただけます。
※他の割引との併用はできません。
主催:世田谷美術館(公益財団法人せたがや文化財団)
後援:世田谷区、世田谷区教育委員会
助成:公益財団法人花王芸術・科学財団、一般財団法人自治総合センター
・本展覧会は、宝くじの助成により実施します。
プレスリリース
画像貸出申込書
作品:

展示作品一覧



関連企画

記念講演会「絵を描くこころの起源」
11月19日(土)14:00~15:00(開場13:30)

美術と演劇のワークショップ「えんげきのえ」
12月4日(日)13:00~18:00

100円ワークショップ「名作列伝」
会期中の毎土曜日 13:00~15:00




展示構成

「開館30周年記念 コレクションの5つの物語」展は、5つの物語を中心に全8パートで構成されています。

<プロローグ>

5つの物語の入り口として、シュルレアリスムの巨匠で素朴派の絵画にも関心が高かったマックス・エルンストの晩年の彫刻作品《ヤヌス》を展示します。ヤヌスは、頭の両面に顔を持ち、古代ローマを守る門の神だったことから出入り口、さらには物事の始まりの神とされています。

アンリ・ルソー《フリュマンス・ビッシュの肖像》1893年頃 世田谷美術館蔵

第1話「私をめぐる物語」

画家になりたいという思いは誰も一度は抱くかもしれません。そして、そのための勉強をすることが容易ではなかったとしても、画家になりたいうという気持ちをなくす必要もないのです。
現在ではフランス素朴派を代表するアンリ・ルソー。しかし、ルソーの絵の価値を認める人は、その晩年まで現われませんでした。数少ない理解者の一人の美術評論家のヴィルヘルム・ウーデが、ルソーのほか、いずれも独学の画家だったアンドレ・ボーシャン、カミーユ・ボンボワ、ルイ・ヴィヴァン、セラフィーヌ・ルイの才能を見出して展覧会で紹介すると、多くの人々が彼らの作品に魅かれていきました。
自分が描きたいものを自分の思いのままに描く、という私だけの物語が、地域や時代を超えた人々の心をとらえることになったのです。


土方久功《マスク》1929-1942年 世田谷美術館蔵

第2話「未知の文化と出合う物語」

言葉も習慣も違う土地に行って暮らすのは、なかなか勇気がいることです。土方久功は、1929(昭和4)年、単身南洋に向かい、パラオ、そして絶海の孤島であるサタワル島へ渡り、10 年以上暮らします。現地で彫刻を制作するとともに、神話の採取、民族学、考古学の調査を熱心に行いました。また、土方がパラオで教えた木彫のレリーフが、ストーリーボードとして現在も受け継がれています。異文化が出合い新たな芸術が誕生したのでした。
また西アフリカのガーナで作られたマネキンは、アフリカと西ヨーロッパ、アメリカとの文化の交流を物語っています。異文化を自分たちの習慣や暮らしぶりと融合させて、とても魅力的なポピュラーアート(庶民のわざ)が生まれています。


柚木沙弥郎《町の人々》2004年 世田谷美術館蔵

第3話「美術と言葉で物語る」

絵と文学は別のジャンルの表現と考えがちではありますが、歴史をさかのぼってみると、絵と文学はいつも近い関係にあったこと気づきます。
洋画家の水木伸一は、俳人の河東碧梧桐を父のように慕い、共に何度も旅をしています。この二人の合作に《碧水帖 上州ぬる湯の記》があります。碧梧桐の特色ある書と水木の絵が並ぶことで、温泉めぐりの物語の情景が立ち上がってくるようです。
また、染織作家の柚木沙弥郎は、近年、絵本の挿絵やオブジェなど多彩な表現に取り組んでいます。《町の人々》は、柚木が絵を担当した村山亜土作の絵本『トコとグーグーとキキ』の一場面にでてくるサーカスの観客をモチーフにしています。
さらに、この第3話ではオディロン・ルドンと駒井哲郎の版画も紹介します。


桑原甲子雄《電蓄》〈世田谷ボロ市〉より 1936年 世田谷美術館蔵

挿話「暮らしの姿」

ここでは挿話として、写真家・桑原甲子雄が撮影した世田谷ボロ市の光景をご紹介します。桑原は東京の上野に生まれ、戦前、仕事の傍らアマチュア写真家として雑誌に投稿をしていました。桑原がスナップショットで捉えたのは、街に行き交う人の姿や、その暮らしぶりでした。世田谷ボロ市を訪れた桑原は、古物を介して賑わう人々のぬくもりもフィルムに定着させたようです。


小堀四郎《無限静寂(宵の明星―信)》1977年 世田谷美術館蔵

第4話「大きな物語のなかの私」

私をとりまく世界はどれほどの大きさなのでしょうか。そして私の内なる世界もまた広大な気がしてなりません。
画家の熊谷守一は、虫や草花、小動物などの小さきものを多く描きました。極端に簡略化した線で描かれているのですが、それでも、それぞれが生き生きと活動していることの発見と驚きを感じ取ることができます。
一方、小堀四郎は1976 年に東京大学のイラン・イラク遺跡調査団に招待され砂漠を訪れ、その星空に魅了されます。以降、圧倒的な自然の力強さや、そこにうごめくエネルギー、美しさを大作に描いていきました。それは、大きな自然のなかにいる自分を確認する行為でもあったのでしょう。
二人とも生命の神秘という壮大な物語をテーマに、絵と向き合っていたように思えます。


横尾忠則《ジュール・ヴェルヌの海》2006年 世田谷美術館蔵

第5話「日常から始まる物語」

現代の美術というと、難解で、日常とかけ離れているという印象を持っている人も多いでしょう。しかし、そのような現代作品も、普段の生活と深く結びついて制作されています。
アメリカの戦後美術を代表する画家、ロバート・ラウシェンバーグは雑誌に掲載された写真を転写したり、路上に落ちている廃品をつかったりして制作しました。彼に続く世代の、ジャン=ミシェル・バスキアやドナルド・バチュラーはニューヨークの路上でのグラフティアートや落書きに多くのインスピレーションを得て、制作をしています。
日本でも、横尾忠則は子どもの頃に親しんだ物語の挿絵を、自作に取り込んでいます。また、写真家・荒木経惟のデビュー作は、荒川区三河島に住む子どもたちの遊ぶ姿でした。


ビル・トレイラー《人と犬のいる家》1939-49年 世田谷美術館蔵

<エピローグ>

最後に、アメリカの独学の画家ビル・トレイラーをご紹介します。独学の画家といっても彼は画家になりたかったわけではありません。85歳の時、路上で暮らしながら絵を描き始めました。そして、トレイラー自身は自分の作品を発表することに関心がなかったといいます。彼にとって描くことは、日々生きることと等しい行いだったのかもしれません。


Copyright Setagaya Art Museum. All Rights Reserved.