ジュリアン・シュナーベルは1951年ニューヨークに生まれています。1979年、皿や陶器の破片を一面に貼りつけたキャンヴァスに、生、死、暴力、愛等々をテーマとする荒々しいイメージを描いた”プレート・ペインティング”をもってニューヨークの画壇に登場。80年代の美術を特徴づける「ニュー・ペインティング」の旗手として注目を集めてきました。今回展示するのは、日本の歌舞伎の舞台で使用された背景幕を下敷きに、彼が新たにイメージを描き加えた”カブキ・ペインティング”と呼ばれるシリーズです。日本の伝統的様式―桜、松、紅葉―の上に自由奔放な形象―抽象的形態や様々なエピソードからとられた人物像など―を大胆に組み合わせたこの作品群は、日本人として私たちが見馴れたものに、まったく新しい切り口を開いてみせるものといえます。日本の伝統文化が欧米より熱い視線を浴びている現在、シュナーベルによるこの試みは、現代的な意味での東西文化の衝突、混交を提示するものです。今回は12点の大型作品により、アメリカの若き美術家と日本との出合いをご紹介します。