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セタビブログ

2021.09.25

世田谷美術館美術大学通信講座②「自宅で毎日3分クロッキー」その14 <絵を描くこととは>

三宅一樹:着彩クロッキー《男鹿月図》 アクリル

三宅一樹:着彩クロッキー《男鹿月図》 アクリル

5月に思い立って満月を描いて以来、月を愛でることが楽しくなりました。
描くことは、「よく観る」ことのきっかけになるのだ、と実感しています。
観察が深まれば、“結果的に”自然と上手くなってくるようです。(三宅一樹)


世田谷美術館では開館以来「美術大学」という約7か月に及ぶ長期講座を開講しています。新型コロナウィルス感染拡大抑制のため、開催中止となった今年は、このブログを通して「通信講座」をお送りしています。
講師の三宅さんが、今まで繰り返しおっしゃってきた「上手に描こうとしないこと」、「作品にしようとしないこと」、それはどういうことなのか?上手な絵とは何か?良い絵とは何か?今回はクロッキーに留まらず、美術の本質についてお話いただきます。
聞き手は当館普及担当の東谷です。


自宅で毎日3分クロッキー その14 <絵を描くこととは>(14分23秒)

→「自宅で毎日3分クロッキー」をYoutubeで見る


三宅一樹:着彩クロッキー《有明下弦月図》 アクリル

三宅一樹:着彩クロッキー《有明下弦月図》 アクリル

半月は、太陽光が月の真横から当たっている、ということを再認識しました。
影に入る境界線付近は、光線の具合で表面のクレーターの凹凸がくっきり見えます。満月時は、太陽光は自分の真後ろから正面に当たっているために、全体が発光して見えるのだと、半月を描くことで理解できました。

三宅一樹:クロッキー《有明下弦月》 鉛筆

三宅一樹:クロッキー《有明下弦月》 鉛筆

着彩クロッキーを描く直前には、実はこれぞメモというべき殴り描きクロッキーを行っています。発見してわかったことをとにかく全てメモしておくことは大切だと思います。これは人にお見せできるものではありませんが…。

三宅一樹:着彩クロッキー《有明三日月図》

三宅一樹:着彩クロッキー《有明三日月図》

いわゆる三日月は夕方の、反対向きの三日月は早朝の空に現れることがわかりました。早起きして見上げる空は、なんと気持ちのいいことでしょう。夏の有明月は、空の色と共に、清々しい色と光に満ちていました。

三宅一樹:クロッキー《有明三日月図》 ボールペン

三宅一樹:クロッキー《有明三日月図》 ボールペン

私は写真を一切使用しませんし、下書きもしません。このようなメモ的観察クロッキーが頼りです。そのおかげで、躊躇うことなく筆が動くのです。

三宅一樹:クロッキー《愛猫ヘソ天図》 ボールペン

三宅一樹:クロッキー《愛猫ヘソ天図》 ボールペン

無防備におなかを上にして眠る我が家の猫の、なんと愛らしいことよ。
クロッキーは日記であり、相手と向き合えることの幸福でもあります。


講師プロフィール
三宅 一樹(みやけ いっき)
彫刻家。1973年東京生まれ。多摩美術大学大学院博士後期過程修了、博士号取得。
2003年より、世田谷美術館美術大学でデッサン・木彫などの講師を担当。
近年の個展:2016年TINA KENG GALLERY(台北)、2018年アートフェア東京(日動画廊ブース)、2019年壺中居(日本橋) など。

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C.A

投稿者:C.A

2021.09.25 - 11:00 AM