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追悼 音楽評論家・丹羽正明氏
2025年8月26日、音楽評論家で東邦音楽大学の教授や那須野が原ハーモニーホール館長などを歴任された丹羽正明氏(93歳)がご逝去されました。丹羽正明氏は当館の開館翌年の1987年、当時の館長だった大島清次氏の意向を汲み、まもなく274回目を迎えるプロムナード・コンサートの企画・協力を長年務めてくださいました。第1回目は現在、国内外で活躍されている小川典子氏のピアノ・リサイタルを皮切りに、これまで多くの方々にご出演いただいています。“ぶらりとやって来て、気軽に立ち寄って聴くという意味を込めたこのコンサートは、美術館で美術を鑑賞するように、音楽も楽しんで頂こうという主旨で、才能に恵まれた若い音楽家を中心に発表の場を美術館が提供し、区民を中心とする方々が聴衆となって、彼等を励ましながら共に音楽を楽しむという企画です。美術館を意味するミュージアムとは、“ミューズの女神たちの居る場所”ということで、もともと音楽(ミュージック)とは深い関係のある場所で開催するプロムナード・コンサートの理念の基礎を築いてくださったのは、まさに丹羽正明氏でした。 コンサートが成り立つためには、演奏者がいて、発表の場所が確保され、聴いてくれる人たち(聴衆)がいて、それらを繋ぐマネージメントが機能する、といった諸要素が有機的に結び付けられる事が必要です。プロムナード・コンサートは丹羽正明氏の企画・協力により、これらの諸要素がすべて善意によって支えられています。それは、出演者の皆様やお越しくださる聴衆の方々、そして何よりもこの企画に尽力くださった丹羽正明氏の音楽への情熱によるものです。2024年度からは、企画・協力に沼野雄司氏(桐朋学園大学教授)がご参加くださり、これからの企画を進めているところでの丹羽正明氏の訃報でした。心よりそのご冥福をお祈り申し上げます。【関連冊子】世田谷美術館プロムナード・コンサート200回記念記録集※記録集の詳細はこちら【プロムナード・コンサート・ポッドキャスティング】丹羽正明氏と出演者のトーク(第265回、第267回、第269回、第270回)