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企画展
利根山光人(1921-1994)は茨城県に生まれ、長く世田谷区にアトリエを構えた画家で、本展は当館では30年ぶりの回顧展です。利根山はメキシコとの関わりで紹介されることの多い作家ですが、このたび、約5年間にわたりアトリエに遺された厖大な版画やスケッチ、コラージュなどの作品群を調査するなかで、メキシコのみならずインドや中国、中東や欧米、そして日本各地の祭り、とりわけ古墳や遺跡に関心を寄せ、世界中に創作のイメージを求める姿があらためて浮かび上がってきました。遺された作品に向き合うと、まるで時空を超えた旅をしているかのような感覚を味わうことができます。本展では、油彩約50点、版画約60点のほか、スケッチ約100点に加え、マヤ、アステカ遺跡の拓本やメキシコの蒐集品、記録写真など、総数250点を超える作品、資料で、多彩な利根山光人の仕事を紹介します。あふれるバイタリティと、自由で旺盛な好奇心で力強く歩みつづけた、利根山の創作の軌跡を辿ります。【展示構成】Ⅰ 初期の仕事1950年代の読売アンデパンダン展出品作をはじめ、力強く戦後復興に歩む日本社会の一側面を描きだした〈佐久間ダム〉シリーズの油彩、版画を含む初期作品を紹介。Ⅱ メキシコへの旅1959年に初めてメキシコへ渡った際に描かれたスケッチをはじめ、メキシコの古代遺跡に衝撃を受けた利根山が描いた作品を中心に展示。Ⅲ 世界への旅インドや中東、アジアの遺跡や祭儀、日本の装飾古墳など、世界各地に取材した作品を紹介。旅先でのさまざまな出会いをつうじて、人間のイマジネーションの原点を見つめた利根山のまなざしを辿ります。Ⅳ 祭り―自然と魂への祈りメキシコと日本、それぞれの祭りを題材にした作品を展示。双方の文化に宿る、根源的な人間の生きるエネルギーに強く触発されて描かれた、利根山の力強い絵画表現を紹介します。Ⅴ ひろがる創造の世界世界のさまざまな文化との出会いを経て生み出された利根山の自由で豊かな作品世界、そして最晩年の〈ドン・キホーテ〉シリーズを紹介。特集展示 マヤ、アステカ遺跡の拓本利根山光人が1960年代にメキシコ政府の許可を得て採集した、マヤ、アステカ遺跡の拓本(世田谷美術館蔵)を紹介。そのほか、メキシコの民族資料や民芸など、利根山が蒐集したコレクションもあわせて展示し、利根山の創造の源泉に触れることができます。【展覧会のみどころ】1. あらためて多彩な仕事に光をあてる、 30年ぶりの大規模回顧展1995年に当館で開催した「利根山光人展」から30年。この間、メキシコとの関わりで紹介されることの多かった利根山ですが、今回は「利根山光人の旅」をテーマに、メキシコだけでなく日本をふくむ世界各地のさまざまな文化をテーマとした作品も紹介します。ヨーロッパの洞窟壁画、インドの石窟寺院、九州各地の装飾古墳、東北の鹿踊りや鬼剣舞をはじめとした祭りや民俗芸能など、いずれも独特で魅力あふれる造形ばかり。それぞれの出会いに心を躍らせた利根山の感動が絵筆から伝わってきます。2. アトリエに遺された初公開となる作品、資料を多数紹介本展は、ご遺族のご協力のもと、2019年から5年間にわたり継続して行ったアトリエ調査を経て実現しました。展覧会では、アトリエに遺された取材旅行時のスケッチブックや写真など、初公開となる資料も多数紹介。1960年代から80年代にかけての風景や風習をとらえた貴重なドキュメントで、利根山が旅先で得た新鮮な印象を今もなお、そのままに感じることができます。これらの資料は何よりも、利根山の作品テーマをよく知るための手がかりとなるでしょう。3. 貴重なメキシコ古代遺跡の拓本を公開1963年、特別の許可を得て利根山が採集したマヤ、アステカ遺跡の拓本。東京国立近代美術館で拓本展が開催されるなど、大きな反響を呼びました。現在、当館コレクションとなっているこれらの拓本を本展では特集展示として紹介。拓本ならではの実物大のインパクトを味わえます。あわせて、利根山が蒐集したメキシコ先住民族の仮面やメキシコ民芸なども展示。時空を超えた異国のイマジネーションにあふれる空間を体験いただけます。
企画展(終了)
昨年4月、72歳で逝去した利根山光人は、メキシコあるいはドンキホーテシリーズといった色彩豊かな作品で知られています。しかし、その画家としての出発点には、暗澹とした絶望感と再生への希望とを同時に抱え込んだ終戦後間もない日本社会の混乱が背景としてあり、その時の体験は利根山光人の創作活動の重要な原動力として生涯消えることはありませんでした。「絶望と希望」はドンキホーテのモチーフに投影されるばかりではなく、メキシコの遺跡や日本の装飾古墳では「死と永遠」「死と生」という相対するものに姿を変えて繰り返し登場します。特に古代遺跡や古墳の壁画、洞窟画などに深い興味と関心を持ち、度々モチーフとして取り上げたことは「永遠なるもの」を残し得た物言わぬ古代人への憧憬と感動からだったといえましょう。人災天災を問わず破壊と再生を繰り返す歴史のなかで、変ること無く悠久の時を刻み続けた遺跡の中に、利根川光人は「永遠」を見出し、絶望や不安、死や破壊、滅亡といった不の存在を乗り越えようとしたのではないでしょうか。このことは灰燼と化した東京の残像を消し去ろうとする自分自身との戦いでもあったのです。戦後勃発した幾つもの美術団体のいずれにも加わることなく、独自の歩調で歩み続けた姿勢には、美術運動といったものとは一線を画し、こうした自らのメッセージを鈍化させまいとする強い意志を読み取ることができます。明朗な色彩に彩られた利根山光人の作品の背後には、常に「永遠」への希求と戦いとが激しく渦巻いているのです。 本展は終戦間もない1948年に制作された「テアトル渋谷」をはじめとして、1950年代の読売アンデパンダン展の出品作から晩年のドンキホーテシリーズに至るまで約半世紀にわたる利根山光人の画業を、油絵、版画、素描など約100点によって回顧します。
ミュージアム コレクション(終了)
メキシコに魅せられた作家、利根山光人の油彩・版画を紹介。また作家自身が現地でとったマヤ・アステカの拓本も展示します。夏休み関連企画も盛りだくさん。
イベント
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夜の美術館で一味違ったトーク&展覧会ツアーを行います。
イベント
利根山のリトグラフ制作に携わった尾﨑正志氏の版画工房を訪れ、絶筆石版画を特別に摺る公開制作を見学します。
イベント
2004年から企画展開催期間中の毎週土曜日に開催してきた名物イベント「100円ワークショップ」。小さいお子様から大人の方まで、どなたでもその場で気軽にご参加いただけ、その時に開催中の展覧会に関連した満足度の高い創作体験ができる人気講座です。企画・運営:世田谷美術館鑑賞リーダー(美術館ボランティア)●100円ワークショップについて 詳しくはこちらをご覧ください
刊行物
世田谷美術館 編集:高橋直裕・横山由季子(展覧会担当) 制作:栄光舎
刊行物
目次謝辞ごあいさつ「利根山光人と戦後50年」高橋直裕〔無題〕ルイス・ニシザワ油彩「利根山光人さんとのふれあい」本間正義「利根山さんとメキシコ」林屋永吉版画「天馬の如く」前田常作「社会と芸術化の関係を更新する 利根山光人の仕事」大岡信壁画作品「利根山光人先生と成徳学園」川並弘昭素描出品目録年譜主要文献目録奥付編集・発行:世田谷美術館 ©1995翻訳:スタン・アンダソン、ロバート・ボクサル写真撮影:田村祥男、北見登制作:大塚巧藝社© Setagaya Art Museum, Tokyo