2024年10月から11月にかけて行われた「Performance Residence in Museum 2024-25」。世田谷美術館とNPO法人アートネットワーク・ジャパンによる、身体表現やパフォーマンス表現を行う若手アーティストを対象としたアーティスト・イン・レジデンス(AIR)プログラムです。3回目の開催となった2024年度は、短歌を詠むダンサー/振付家として活動する涌田悠さんが世田谷美術館に15日間滞在しました。
滞在中の様子は、本プログラムの
特設サイト(note)にて、
「滞在日誌」として公開中です。本プログラムのコーディネーターをつとめた武田侑子(NPO法人アートネットワーク・ジャパン)が写真とともに詳細にリポートしていますので、ぜひご覧ください。
今回のブログでは、特設サイトの「滞在日誌」をもとに、初日から最終日までをダイジェストでご紹介します。
涌田さんは滞在するにあたり、「からだとことばで世田美と触れ合う!~日常生活とアート/アーティストと鑑賞者のあわいを繋ぐ営みとは?~」というテーマをかかげ、リサーチから始めました。
初日(2024年10月4日)は、美術館内外の散策リサーチや企画展
「生誕130年記念 北川民次展―メキシコから日本へ」を鑑賞。2日目(10月9日)は、世田谷区立の小学校4年生を対象とした事業である
「美術鑑賞教室」を見学しました。また同日、
鑑賞リーダー(当館ボランティア)に涌田さんの活動をご紹介する会を設け、その後に鑑賞リーダーへインタビューも行いました。この2日間でさっそく短歌も生まれました。
●滞在日誌 2024年10月4日、9日(1-2日目)滞在3日目(10月16日)は、当館の事業全般について学芸員へインタビューを行いました。鑑賞リーダーは美術館に「訪れる」側であったのに対し、今回は「働く」側の想いや考えをうかがうインタビューとなりました。
● 滞在日誌 2024年10月16日(3日目)滞在4-5日目(10月22日-23日)は、当館が定期的に実施している講座「美術大学」に参加。美術史に関する講義や、美術大学OB生を対象とした実技の授業を体験しました。受講生たちの「学ぶこと」や「表現をすること」への純粋なエネルギーに触れられた日となったようです。
● 滞在日誌 2024年10月22日-23日(4-5日目)滞在前半が終わり、ここまで涌田さんが創作した短歌をまとめて公開しました。
● 9・10月の短歌滞在6日目(10月30日)は、当館公式YouTube「世田美チャンネル」に公開するインタビューを収録しました。前半の滞在を終えた時点での感想や、滞在前に設定したテーマに対する考えの変化などを涌田さんからうかがうことができました。
● 【世田美チャンネル】vol.38「Performance Residence in Museum 2024-25:涌田悠インタビュー」11月に入り、滞在7日目(11月8日)は、翌週に実施するオープンデーの準備を行いました。鑑賞リーダーにご協力を仰いで一緒に美術館内外を巡り、涌田さんが滞在中に実践してきたワークを一緒に試してみる時間となりました。
● 滞在日誌 2024年10月30日、11月8日(6-7日目)滞在8・9日目は、オープンデーの準備や、滞在最終日に予定している報告会に向けて準備をすすめていきました。
● 滞在日誌 2024年11月13日、11月15日(8-9日目)滞在10日目(11月17日)、オープンデー当日。「からだとことばで世田美を味わう!~日常とアートが混ざり合うところを巡る旅~」と題し、参加者の方々と美術館を全身で味わい、その感動を短歌にしたためる濃密な3時間半となりました。
● 滞在日誌 2024年11月17日(10日目) 
撮影:丸尾隆一
滞在11-14日目(11月20日-23日)は、滞在最終日の上演に向けて集中して準備を行いました。
● 滞在日誌 2024年11月20日-23日(11-14日目)そして最終日、滞在15日目(11月24日)は、滞在報告会を開催。滞在中のリサーチや実験が詰まった『縁のない』が上演されました。上演後は滞在を振り返るトークを行い、会場のみなさまからも感想や質問をいただき、交流も盛んに行われた報告会となりました。
● 滞在日誌 2024年11月24日(15日目)
撮影:加藤 甫
滞在期間終了後、涌田さんや企画メンバーが改めて本プログラムを振り返ったコメントも公開しています。
●各コメントはこちら涌田さんにとって今回の滞在は、からだと言葉を通して思考しつづけ、アートが持つ根源的な力や、それが生み出すよろこびについてじっくりと考える時間になったといいます。涌田さんの試みから世田谷美術館は、日常や自然との境界線が曖昧で、アートが静かに混ざり合っているような場である、といううイメージが現れでたように感じられ、当館の理念である「ARS CUM NATURA AD SALUTEM CONSPIRAT―芸術と自然はひそかに協力して人間を健全にする―」を実感できたともいえる時間でした。