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セタビブログ

2021.09.25

トランス/エントランス特別篇「夢の解剖―猩々乱」の稽古開始!

稽古中の長山桂三さん。後方で座っているのは美術家・吉田萠さん。

稽古中の長山桂三さん。後方で座っているのは美術家・吉田萠さ…

当館のエントランス・ホールを舞台にするパフォーマンスシリーズ「トランス/エントランス」、第17回目となる今回は特別篇です。イタリア出身の演出家・振付家のルカ・ヴェジェッティさんをお迎えし、「猩々乱(しょうじょうみだれ)」という能の演目を演出していただくのです。

エントランスで照明美術(デザイン=吉田萠)を確認する…


本シリーズ担当の筆者がルカさんと出会ったのは2017年、横浜能楽堂でのこと。笠井叡さんや鈴木ユキオさんなど当館ともご縁の深いダンサーと、大倉源次郎さんなど第一級の能楽師がコラボするユニークな作品「左右左(さゆうさ)」を観に行ったのですが、その原案・演出・振付を手がけたのが、ルカさんだったのです。素晴らしい作品に感激し、終演後にお声がけしたのが始まりでした。

ルカさんに加え、パートナーである美術家・吉田萠さんとも意気投合し、2018年には当館の「ブルーノ・ムナーリ」展のための新作パフォーマンスを委嘱。その直後から、今回の「夢の解剖―猩々乱」プロジェクトが始動しました。架空の動物「猩々」がほろ酔い気分で水上で舞う、という趣向の演目を、橋掛りのような廊下、水紋のような意匠をもつ当館の白い空間に置いてみる――さあどうなるでしょうか。

コロナ禍による公演の1年延期、そして困難を極める入国ビザの取得をギリギリでクリアし、9月17日、約3年ぶりに当館にやってきたルカさん。今回のプロジェクトは、現場に立たなければ演出が完成しない性質のものですが、本番まで2週間少々しかありません。しかし3年前と同様、ルカさんは静かにテキパキとクリエーションを進めます。

9月19日には、観世流シテ方の長山桂三さんが初稽古に。「左右左」に御子息の凜三さんが出演した関係で、長山さんとルカさんは互いをよく理解しています。今回長山さんは、サプライズとしてルカさん用の能面を持参! 「無理難題を言われる前に、まず体験していただかないとね」といたずらっぽく微笑み、ルカさんも喜んで能面を付けます。

長年にわたり、能から多くを学んでいるルカさんですが、…


元バレエダンサーでもあるゆえ、優れた身体能力と空間感覚を持つルカさん。ほぼ何も見えない状態でシテの動線を確認し、瞬時にさまざまなことを理解したようです。実に興味深い、これはすごい…と何度も呟いていました。

さて、能楽堂とは全く異なる空間である当館のエントランス。ここでわざわざ能楽師に舞っていただく、という挑戦にまつわる困難さは、数え上げたらキリがありません。

稽古中の長山桂三さん


ルカさんのヴィジョンを共有しながら、長山さんは驚異的な集中力で、美しく緊張感のある舞を繰り出します。その姿を拝見していると、コロナ禍が続くなかでこのような企画を実現するためのあらゆる苦労が、ふっと消えていくようにも思えます。

稽古中の長山桂三さん。後方で座っているのは美術家・吉…


「夢の解剖―猩々乱」、本番は10月5日(火)・6日(水)、いずれも20時開演です。
チケット発売は9月28日(火)の正午から。コロナ禍により、わずか40席限定とはなりますが、お求めやすい立見席を若干設けます。夜の美術館でみる夢を、どうぞお楽しみに。

本企画は、劇場等でのコロナ感染症対策も参考にしながら、さまざまな防疫対策を講じて稽古・上演いたします。

イベントの詳しい内容、参加のご希望はこちら→イベントページをご覧ください

M.T

投稿者:M.T

2021.09.25 - 02:40 PM