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刊行物

『実験工房展―戦後芸術を切り拓く』

[カタログ/2013年発行]

-開催概要から-

本展は美術家と音楽家らによって結成され、戦後美術の新たな地平を切り拓いたグループ「実験工房」(Experimental Workshop 1951-1957年頃)の全貌を紹介する、公立館として初めての展覧会です。「実験工房」には次のような多彩なメンバーが名を連ねました。
[造形] 大辻清司、北代省三、駒井哲郎、福島秀子、山口勝弘、[音楽] 佐藤慶次郎、鈴木博義、園田高弘、武満徹、福島和夫、湯浅譲二、[詩・評論] 秋山邦晴、[照明] 今井直次、[技術] 山崎英夫(五十音順)。グループとしての活動期間は7年程でしたが、次世代の美術、音楽をリードしたメンバーにとって、その後別々の道を歩むものの、「実験工房」は彼らにとって創作の原点として重要な役割を果たしました。
グループの命名者である美術評論家で詩人の瀧口修造らの支持を受け、「実験工房」の活動は1951年のピカソ展を記念したピカソ祭のバレエ『生きる悦び』の開催を機にスタートします。その後「実験工房」はダンス、演劇、映画といった多岐にわたるジャンルへと活動の幅を拡大して行きました。正式な解散はしていませんが、グループとしての活動がほぼ終了する1957年頃までの間、総合芸術としての斬新な舞台公演、日本初演の現代音楽のコンサート、そして現代美術の世界で先駆的な作品を数多く残しました。
本展では、彼らの幅広い活動の軌跡を、絵画、立体、映像、写真のほか、楽譜や公演プログラムなどの関連資料約450点の展示を通して、その活動の全振幅を検証し、近年とみに高まりつつある再評価への確かな土台を提供したいと思います。
1940年代後半から1960年代の造形作家の代表作を一堂に集め、映画『銀輪』や近年発見された未公開映像資料の上映を行います。また、東京通信工業(現ソニー)が発売した当時としては画期的なスライド写真と音声とをリンクさせたスライド映写機によるメンバー合作の「オート・スライド作品」(1953年)を上映し、そのうちフィルムが失われてしまった「レスピューグ」の映像と音楽の再現を試みます。
ジャンルを横断したグループの特質を多角的に捉えるため、絵画、写真、音楽などさまざまな分野の専門家による講演会や現代音楽の演奏会等を開催する予定です。

目次

「実験工房―芽生えと兆し」水沢勉

再録「実験工房と1950年代」ヤシャ・ライハート

「実験工房の音楽活動」石田一志

「実験工房―世界の舞台へ」手塚美和子

「影像から/影像へ―初期実験工房の探究」大日方欣一

「実験工房―舞台とパフォーマンス」西澤晴美



カタログ

第I章 前夜

第II章 「実験工房」の時代 1951-1957

第III章 1960年代へ



「激動の中の美術雑誌、そしてバレエ『生きる悦び』への助走」杉野秀樹

「実験工房前夜―日米通信社時代の滝口修造」朝木由香

「実験工房時代の駒井哲郎」石井幸彦

「「実験工房」のかたち―北代省三を中心として」佐藤玲子

「「実験工房」誕生の背景としての世田谷―新作曲派協会からの展開」矢野進

「実験工房の電子音楽」川崎弘二

「インターメディアとしての運動体―1960年代における実験工房について」平野明彦

「実験の精神が語るもの―実験工房、その後を個々の活動から探る」麻生恵子



実験工房メンバーによる座談会

(出席者:今井直次、福島和夫、山口勝弘、湯浅譲二/聞き手:那須孝幸/構成・編集:那須孝幸、松原知子)



実験工房 略年譜

実験工房メンバー略歴

実験工房時代の人物関係図

プログラム掲載文一覧

主要文献リスト

出品リスト



奥付

編集:神奈川県立近代美術館(西澤晴美、朝木由香)、いわき市立美術館(平野明彦)、富山県立近代美術館(麻生恵子、杉野秀樹)、北九州市立美術館(那須孝幸、松原知子)、世田谷美術館(石井幸彦、矢野進)

和文英訳:スタン・アンダソン(Stan Anderson)、ポリー・バートン(Polly Barton)

英文和訳:管啓次郎、川野惠子

編集協力:角山朋子

校閲:岩田高明

デザイン:梯耕治

制作:印象社

発行:読売新聞社、美術館連絡協議会 ©2013

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