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セタビブログ

2017.12.27

出張授業その1:《オーロラ》の世界を想像してみよう

アントワーヌ・ブールデル《オーロラ》1899年

アントワーヌ・ブールデル《オーロラ》1899年

世田谷区立の全小学校の4年生を対象とした「美術鑑賞教室」。
子どもたちが美術館に来館するほかに、希望校に出張授業もおこなっています。授業をおこなうのは、当館のインターンです。今年も、美術館の休館中に出張授業をおこなっています。

アントワーヌ・ブールデルの《オーロラ》、この作品は美術館エントランスを入ってすぐ左、企画展示室入り口辺りに展示されています。この作品も美術鑑賞教室ではとても人気があり、展示室に入る前、美術館での最初の作品として鑑賞するグループが多く見られます。そして、必ずと言って良いほど、子どもたちはポーズを真似ます。
さて、この作品を扱った授業、まるで学芸会に招待されたかのような楽しい寸劇仕立ての発表を伴う授業でした。

鑑賞教室にて ポーズを真似て鑑賞する子ども達



作品:アントワーヌ・ブールデル《オーロラ》
授業内容:タイトルは伏せたまま、動画と写真から彫刻のディテールをよく観察し、どういう状況でこのポーズを取るに至ったか、グループで前後を考えて、3分程度の劇に仕立てて発表する。(全90分)

まずは、目に見えることについて意見が上がります。「男?女?」、「裸だ」、「髪が短い。それとも結っているのかな?」。そして同じポーズをとってみます。最初は適当に真似て上を指すポーズをするのですが、次第に「違うよ、指は上を指してるけど、顔は反対側の下を向いているんだよ」、「あがっている片足の角度はもっと高く!」、「足元に何かがまとわりついている。これはなんだろう?」と彫刻を細部にわたって観察し、考えます。
ああでもない、こうでもない、という真剣な議論の末、5班×3クラスで、合計15つの劇ができあがりました。
一例を紹介しましょう。

ポーズの研究をするこども達



ナレーター「ある日、ある人が道を歩いていました」
ある人「あ、こんなとこに落とし穴が!!ああ~!!」
《オーロラ》のポーズでイスを並べて作った「落とし穴」に落ちる
ある人「どうしよう、出られない!!神様助けてください!」
ナレーター「そこへ神様が表れて言いました」
神様「1年経ったら、ドロが乾いて穴から抜け出せるだろう」
ある人「ありがとうございます!!・・・え?1年??生きていられるのかなー」
ナレーター「1年経ちました。生きていました」
ある人「やったあ!神様の言った通り、抜け出せた」
ナレーター「おしまい」

手は上を指しているのに、顔を下に向けている、ということを「落とし穴に落ちる瞬間」と捉え、足元にあるものはドロで、足をとられて動けないと考えたわけです。見事な観察力と想像力でした。
その他にも、「泳いでいる最中に水着が脱げて足に絡み付いてしまったけど1位になった人の表彰台でのポーズ」や「火事の中、煙にまかれながら家族を逃がそうと奮闘するお母さん」、「この世に未練を残しながら天国に召される人」、「迷った末に社長に給料をあげてとお願いする人」など、子どもたちの演技に大笑いしつつ、なるほど、と感心するものばかり。子どもたちは彫刻の隅々までよく見つめ、情報を引き出し、繋げ、短時間でちゃんとオチのあるお話を作り、役を決めて、練習し、机やイスを工夫して舞台を作り、見事に演じました。授業といいつつ、こちらがひたすら楽しませてもらった1日でした。

それにしても、子どもというのは本当に「お話を作る」天才ですね。
この子たちは1月に来館予定です。本物の《オーロラ》の前でどんな反応をするのでしょう。これまた楽しみです。

C.A

投稿者:C.A

2017.12.27 - 11:54 AM

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