本展覧会では、「サハラ」、「ナイル」、「エチオピア」、「グレート・リフト・ヴァレー」、「メッカとメディナ」、「チベット」、「アンデス」の7つのテーマで代表作品をご紹介し、野町和嘉の50年にわたる活動の足跡を辿ります。
【 展覧会のみどころ 】
1. 写真家・野町和嘉の集大成
野町和嘉は1946年に高知県幡多郡三原村に生まれ育ちます。三原村は高知市内から100km以上離れ、現在東京から時間的距離が一番遠い村として知られています。高校時代にカメラの魅力に取りつかれ、上京して写真家を目指します。1972年のサハラ体験以降、野町は世界各地の知られざる世界に足を踏み入れ撮影をしてきました。南スーダンの牧畜民の取材では、通訳もガイドも伴わずにキャンプ地に入り、牛と共にある人々の暮らしを撮影しました。その写真は世界に配信され衝撃を与えます。以降、アフリカ、ユーラシア、南北アメリカ大陸と、野町の人と信仰と暮らしを追う撮影のフィールドが広がっていきました。
2. 海外での評価の高さ
サハラを旅し撮影した野町は、写真集を刊行しようとダミーブックを作り、平凡社を訪れます。それを見たイタリアのモンダドーリ社の編集者が、即座に刊行を決定。最初の写真集『サハラ』が日、英、伊、仏、米の5か国での出版となりました。刊行後、シナイ半島を取材し、写真集『シナイ』が同様に国際出版されます。その後、野町の写真は『LIFE』をはじめとする、各国のグラフ雑誌に掲載されていきます。2005年には30年の活動の集大成となる写真集『地球巡礼』を11か国語で刊行。2013年にはローマ市立現代美術館において総点数225点での回顧展を開催しています。
3. もう見ることのできない世界
野町がアフリカ大陸奥地まで分け入った1970年代から1980年代は、人々の暮らしは穏やかで安全だったようです。しかし、その後政情不安が高まり、紛争が勃発し、入国できない国々も少なくありません。また2000年以降、デジタル・デバイス、携帯電話の普及により、各地の暮らしは平準化されていきます。野町は同じ場所を数年開けて繰り返し訪れ撮影をしていくなかで、光景がどんどん変化していくのを実感してきました。人々の生活様式が、その土地独自の風習が、そして身に着けるものが急速に変化してしまった現在、野町の写真の光景は貴重な地球のドキュメントと言えるでしょう。