Ars cum natura ad salutem conspirat

横須賀探訪。


 大型連休も今日で終わりですが、皆様如何お過ごしでしたでしょうか。近頃さまざまな方面の知人から「美術館ブームですね」などと言うお言葉を頂き、都心の美術館もこの連休中に空前の賑わいを見せていたようです。確かに目を引く美術館の開館が続いてはいますが、元来“美術”は単なる“流行”とは無縁のはず。そこに“動向”や“潮流”はあれど、消費だけではない、歴史を繋ぐ何かが不可欠なはずです。こうした世間の関心が単なる熱病に終わらず、そのまま地に足の着いた知的関心として定着すれば素敵なのですが。

 それはさておき、先月末、神奈川県の東端に横須賀美術館が開館しました。馬堀海岸から広がる静かな住宅街を抜け、何とも長閑な海岸を経ると突如現れるこの美術館は、その交差する動線、最新の設備、清々しく柔和な展示空間、どこを取っても恐ろしく良く出来た建築です。展示室が見事に空間の隅々へと広がっているとでも言いましょうか。谷内六郎、舟越桂、村井正誠などの世田谷と所縁の深い作家も展示され、「ルソーにみる夢」展でお借りした藤田嗣治とも再会し、更にはアルフレッド・ウォリス展や若林奮展が予定されているなど、当館との縁をそこかしこに感じずにはいられません。海に臨む美術館でのウォリス展はとびきりロマンチックなことでしょう。大胆かつ魅力的なハード(建築)に気の利いた奥深いソフト(展覧会)。こうした美術館が今後の美術を牽引して言って欲しい、と個人的には切に望むところです。


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