Ars cum natura ad salutem conspirat

世田谷とバレンシアをつなぐもの。


美術館での多々ある仕事の傍らに、様々な方々からの疑問にお答えする、というものがあります。「昔やった展覧会の図録はまだ扱っていますか?」というものから、「○○の作品≪△△≫はいつ展示されますか?」「私の持ってる油彩画が真作か知りたいんですが」というものまで、果ては「椿の絵を描いてる世田谷在住の作家って誰でしたっけ?」という難題まで本当に様々。そんな中、つい先日外国の方から一本の問い合わせが入りました。

英語での「英語かスペイン語喋れますか?」という問いに、「英語なら多少は…」と答えると、何とIVAM(スペインはバレンシアにある、スペイン初の近代美術館です)の学芸員とのこと。しかも調べているのが世田谷在住の写真家・桑原甲子雄氏のことということで二度ビックリ。彼の経歴などの詳細をひと通りメールで確認した後に、「しかしまた何で桑原さんのことを??」と恐る恐る聴いてみたところ、スペイン国内で写真がまだ芸術として認められ難かった時代から熱心に集めていた収集家のコレクションに二点含まれていて、現在は同館に寄贈されており、今度の収蔵品展に出すとのこと。その後先方の写真のコレクションの図録を送ってもらったのですが、アジェ、タルボットに始まり、マン・レイ、ロドチェンコ、デュシャン、ブランクーシ、エヴァンス、ポルケ、リヒターから、ストゥルートの美しいモノクロ、ボルタンスキーの大掛かりなインスタレーション、そして我が日本の誇る杉本博司まで、質・量共に圧巻です。ライブラリで配架してもらってますので、是非。何にせよ、貴重な機会を与えてくれた世田谷在住作家に深く感謝、です。


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