Ars cum natura ad salutem conspirat

こだわりの山名文夫アトリエ再現・その3


実際に世田谷美術館でのアトリエ再現には、小宮重美氏、水野顧問、村井参与が8月28日、29日の2日間つきっきりで取り組んでくださいました。

美術館からは、小堀四郎が藤島武二から譲られたイーゼル(写真に写っているのとそっくり!)や、向井潤吉のアトリエで使われていた棚(ちょっと写真とは異なるタイプだけれど古い感じは出ている)、創作室にあった1台だけ色の違う作業机などを運び込み、大きな鏡もそれらしく新規に作りました。ただしこの鏡は経費節減でアクリルを貼ったので、ビックリハウスの鏡のように一寸離れると物がみな歪んでうつり、村井参与に却下され、急遽ガラスに変更。「どうです、空間がピシッと締まるでしょう。」という村井参与の言葉に「納得!」(この展示では、もの皆すべからくリッチでなければならない!?)さらに、夜のアトリエを想定というので、はめ込んであった造作の窓をはずして黒い紙を貼り、窓を嵌め直しました。これで雰囲気がぐんと変わりました。

村井参与は写真に写っていた特徴的な大きな照明器具をオークションで入手、小宮氏はヘビースモーカーだった山名が愛用していた当時のピースの空箱を某所から借り受けてきました。机の上には、描きかけのイラスト(年代も合わせています)のコピー(万一ということもありますのであくまでもコピー)。そしてその本物のイラストは額に入れて近くに展示してあります。最後の仕上げは、大きな灰皿に村井参与が自ら吸って作った山盛の煙草の吸殻。

会期が終われば解体されてしまう山名文夫の成城の再現アトリエを、資生堂意匠部の伝統を伝える宣伝制作部の「こだわり」と共に、是非心ゆくまでご堪能いただきたいと思っています。


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