Ars cum natura ad salutem conspirat

世田谷美術館の新収蔵品について


毎年、世田谷美術館の収蔵品に新しい顔が加わります。


新たに収蔵された作品はカビや虫害の被害を受けないようにするために、まず燻蒸(*)します。これは文化財を末永く収蔵庫で保管するために必要な措置です。

燻蒸を終えた作品は、保存担当の学芸員と修復家による“健康診断”を受けなければなりません。特に額装された絵画の場合、画面を保護するアクリル板が装着されているか、画面に汚れや絵具の剥落はないか、カンヴァスの張りは十分か、あるいは額の強度はどうかなど長期的な視点から総合的な調査をします。


その結果、処置内容として一番多いのはアクリル板の装着です。日本は地震国のため、作品が落下してガラスが割れ画面を損傷する事故が多数報告されています。


最近は技術の進歩から映り込みの少ない低反射アクリルが開発されていますので、こちらに変更する作業を行っています。地震によって一番力が加わる吊り金具も十分強度のあるステンレス製のものに交換しています。


このような手当てをして収蔵庫に入れておけば、作品にとって健康でしかも安全な状態を保つことができます。収蔵品展の会場には美術館仕様の処置を施した作品が並ぶことになります。


現在開催中の第1期収蔵品展<人々のものがたり>にも収蔵品として新たに加わり、初公開している作品が2点含まれています。小堀四郎の《不詳(アトリエの青衣の女)》と村井正誠の《二人》です。


今年開催される収蔵品展は初公開となる新収蔵品が目白押しです。新収蔵品が加わり益々魅力を増す収蔵品展にご期待下さい。


*燻蒸(くんじょう):病菌および害虫を殺すために薬剤を用いていぶしむすこと。


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