Ars cum natura ad salutem conspirat

赤ん坊のお祝い!?


新年おめでとうございます。お正月といえば、年賀状。世田谷では館よりお出しする新年のごあいさつにその年の企画展からこれぞという作品を選び、ご紹介していますが、2010年は、世田谷として一押しの画家、アンリ・ルソーによる《赤ん坊のお祝い!》が登場しました。


これは、8月から10月に開催予定の「ザ・コレクション・ヴィンタートゥール」展に出品される作品です。これまでまとめて館外貸し出しは一切なかったという知る人ぞ知るスイスの美術館のコレクションで構成する企画ですが、ゴッホ、モネ、ルノワール、ピカソ、カンディンスキーといった有名どころに混じって、この赤ん坊も初来日となります。ルソーの作品としても非常に良く知られており、印象に残っておられる方も多いのではないでしょうか。

実は、この作品、これまで様々なタイトルがありました。「赤ん坊を祝って」「赤ちゃんおめでとう」「赤ちゃんバンザイ!」「ポリシネル人形を持つ子供」などなど。ルソー自身が1903年の展覧会に出品したときのタイトルは、Pour féter le bébé! 赤ちゃんの無事の成長をお祝いして・・・(乾杯!)というような意味合いでしょうか。最後に「!」とついていることが、ますます訳を難しくしているように思います。


つまるところ、おもちゃのあやつり人形を持たせて、お誕生日に記念撮影をするような感覚で描かれた肖像画といったところでしょうか。それで主役の子供が、すっかり不機嫌になっているのもわかるような気がします。手にしているあやつりは、ポリシネル人形というフランスの人形劇ではポピュラーな道化役ですが、この堂々とした赤ん坊の前では、お手上げの画家ルソー自身のようにも見えてきます。


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