Ars cum natura ad salutem conspirat

銅版画家、駒井哲郎が楽しんだモノタイプを体験!


現在開催中の展覧会「福原コレクション 駒井哲郎1920-1976」の関連企画として、毎週土曜日、モノタイプの版画を体験できる「100円ワークショップ」が開催されています。


駒井哲郎の作品の多くは、銅板や亜鉛板を薬品で腐食させて凹凸面をつくった版で刷られたものがほとんどですが、後期の作品には、モノタイプで刷られた作品も多く含まれています。

駒井哲郎のモノタイプの作品は、金属に凹凸面の加工を施すことなく、平なまま、直にインクを載せて、インクを一部拭き取ったり、パステルの粉を散らすなどしてから、プレス機で圧力をかけて紙に刷りとって出来上がります。

そのため、刷り上がると、凹凸がないので、形象が版に残らず、同じものを2度とすることができません。版を使いながらも、同一作品が1点しか存在しないのが、このモノタイプです。


 版を腐食させ、じっくりと制作に向かうイメージの強い駒井哲郎ですが、モノタイプの作品は、色彩が豊かで、即興性が高く、どこかのびやかな印象を与えます。駒井夫人も、駒井哲郎が家でモノタイプの作品と取り組んでいる時は、特に楽しそうだったと回想しています。


 そんなモノタイプにいざ挑戦してみました。

刷り上がる瞬間の、実験結果にわくわくするような、何とも表現しがたい楽しさ。

と同時に、駒井哲郎のモノタイプ作品が、駒井哲郎のなにげなくインクを拭き取る痕跡ひとつにも、彼ならではの独特な詩的センスに溢れていることを痛感します。

是非、皆さんも体験されてみてはいかがでしょうか。


 前期、後期で作品が総入れ替えとなる展覧会も、5月30日からは、後期展示が始まります。後期展示は、駒井哲郎の1961年以降の作品が中心で、色鮮やかなモノタイプの作品も多数展示されます。是非ご高覧ください。


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